ハブ予 防対策と生態など「ハブ」はハブの仲間を含む場合あり. 表示の価格や資材の提供状況 等は変動.対策の手法や道具  <参考価格;入手先> ハブ捕り器

罠作りのこつ

ハブ等の小型野生動物捕獲用の,おもに箱型罠の開発における留意点
マウス繁殖用容器等の製作にも共通)
最下部に,小分け材料の入手先 ヘビ用罠の製作例 あり
以下で,ポリプロピレン製は,プラスチック製と同意

 標本採集や生態調査,さらに駆除等の目的で,野生動物を罠で捕らえる必要があり,適当な罠が無い場合には,新たな罠の開発を要します.ここでは,ハブの罠開発時の経過を元に,罠開発に際しての留意点を示します.
  なお,罠の構造,材質,大きさ等は対象種と目的によって大きく異なると予想されますが,ここでは,比較的共通した事柄について記します.また,動物を罠で 捕獲するには,餌などの誘引物を用いるか,フェンスなどの障害物沿いに誘導するか,いずれかの方法が必要ですが,それらについては既存の製品や情報を参照 して 下さい.
ホームページへ

   

1.長寿命をもたらす材料

罠やマウス飼育箱には,以下の材料が適します.ステンレス製の網やネジ,針金は,腐食しないので,ポリプロピレン部分が壊れた場合,外して再利用できます.

  金属の板,網:  ステンレス,アルミ,亜鉛メッキ(ドブ漬け)の鉄,トタン
  針金,ネジ,ステープラー針:  ステンレス
  その他の板,箱:  ポリプロピレン(プラスチック)製の市販の箱,段ボール

(1)箱(板)
箱の材料としては,市販の道具箱や 衣装ケースなどの,ふたが固定できるものが便利です.動物の出し入れや修理,洗浄などの際に,扱いやすいです.密閉性の良い蓋の自作は困難です.市販の箱 は,強固で,積み重ねやすい構造になっているため,保管・運搬に便利です.目的に見合った大きさの箱をホームセンターのみならず,カタログなどから選びま す.以下の事柄にも留意下さい.
ポリプロピレン製品は,既製の収納箱等と段ボール状の板があり,いずれも黒色のものが場合によっては3倍以上の寿命を持ち,耐久性が高いです.これは,黒色の製品は炭素を含み,紫外線に強いためです.
ポリプロピレン製の段ボール状の板は,カッターで切断でき,針金やステープラーで接合できるため,のこぎりやドリルなしで加工が可能で,扱いやすいです.折り目には,カッターで溝を入れない方が,裂けにくく長持ちします.野外仕様なら,厚さ5mm前後の板が適するでしょう.
(2)網
罠内のマウス飼育室の下部やマウスの飼育箱の底には,排泄物による腐食に強いステンレス製の網が最良です.なお,マウス飼育部の底に近い部分(底から3,4cm)に網を設ける場合(マウス飼育室の仕切など)も腐食しやすいため,ステンレス製が望ましいです.
ステンレス網は,切断してもほつれない溶接品が扱いやすいです(沖縄では県外発注になり,かなり高価です).最下部近くに記した業者から,小分け購入が可能です.
(3)針金,ネジ(ビス)
針金やネジも,できるだけステンレス製のものを用います.やや高価ですが,寿命はほぼ永久的です.適したネジ(ビス)は,最下部近くに記した業者から小分け購入が可能です.

野外での罠の維持管理に障害となるものとして,以下のものがあります(沖縄における例).
  台風,塩害,紫外線,雑草
  野鼠,マングース,オカヤドカリ,野犬,イノシシ,人,シロアリ
誘導トラップ内に,ツル性植物が侵入する場合があります.動物は,罠を壊すか持ち去る可能性があります.シロアリは木材利用の際の障害で,上記材料使用時には問題にはなりません.

なお,長寿命よりも手軽さと安価さを選択するなら,上記の材料等にこだわる必要はありません.たとえば,網戸用のナイロン網で造るヘビ用誘導トラップは,現地で簡単に作成でき,米国で調査用に用いられています.
ホームページへ
2.入り口の工夫

入り口の種類は,大別して以下のものがあります.
  先細り型:      円錐形, 隙間形
  ドア(フラップ)型: 待機時は閉, 待機時は開で捕獲後に閉

対象種が入りやすく,逃げにくいことが条件です.
箱が網製なら,捕獲された動物が入り口に気づきにくいで す.箱や入り口の一部が網製でも,その効果が期待されます.沖縄のトタン製円錐形(金穴型)の入り口は,当初は直接箱の穴に固定していましたが,アカマタ などが脱出する際に,円錐先のひだを曲げる例が出てきました.ひだが曲がった状態では,ハブが侵入できず,見回り時に容易に復元ができましたが,捕獲率の 低下をもたらしました.改善のため,箱の穴と円錐基部との間に,円筒形の金属網を挿入したところ,ひだの変形は激減しました.これは,アカマタなどが円錐 の先の空隙に気づきにくくなったためと推測されます.
上記の構造はやや複雑です.穴の周囲を網にすれば,同様の効果が期待できます.箱の側面の一 部を,長方形などに切り抜き,そこに入りサイズの穴を開けた金網を内側から固定する方法です.また,円錐形の入り口自体を,金網で造ることも一案です.そ の場合,先に空けた穴を小さめにしてスリットを入れておくか,穴は大きめでフラップ(針金でも可)を付けるかします.側面の網,円錐の網とも,2分か3分 目の亜鉛メッキの網が適するでしょう.最下部に作製案を示しました.なお,この段落の内容は案段階のもので,試用して実績を確かめたものではありません.
なお,既製のトタン製円錐型入り口は,最下部近くに記した業者から購入が可能です.
入り口に,斜めに吊したフラップを用いる場合,中に入ったマイマイがフラップ上部に居座ると,フラップが開かなくなり,狙いの動物は捕れなくなります.

対象種よりも大型の体を持つ非対象種の侵入を防ぐ工夫
入 り口を小さくするか,入り口に格子等を付けて,大型の動物が入れないようにします.入り口を小さくしすぎると,対象種の大型個体が捕れにくくなります.対 象でない種に小さい幼体がいることが多いため,混獲を零にすることは困難です.非対称種の成体の大きさ(頭の幅等)より,少し小さい入り口か格子が狙い目 です.

ホームページへ

3.安全性の工夫

ハブ等の危険動物用の罠は,捕獲した危険動物を入れたまま,保管・運搬することがあります.入り口から逃がさないため,また罠の網部から咬まれないため,罠を入れる容器を準備す ることが必要です.罠内に囮のマウスがいる場合には,マウスの排泄物で車などを汚さないように,罠の箱より一回り大きいポリプロピレン製の箱に入れます が,直射日光や風通しにも留意して下さい.直射日光を避けるには,発泡スチロール板を乗せます.箱などが無い場合は,入口にガムテープなどを貼ります.
   
4.捕獲された野鼠等に穴を開けられない工夫
(マウス繁殖用容器等の製作にも共通)

箱内に,囓れる突起物や材料の端の部分があると,囓られます.
(1)ポリプロピレン製入り口
奄 美諸島で用いられているハブ捕り器は,ポリプロピレン製の円錐形入り口を備えています.ハブの捕獲率には申し分なかったですが,沖縄県では捕らえられたほ 乳類に入り口の先をかじられる例が珍しくなかったです.これに似た魚類捕獲用の円錐形入り口も,同様の破損に至る可能性があります.破損が多発する場合に は,トタンか金網製の円錐形入り口を用います.トタン製のものも,展開図を元に自作可能です(厚すぎる板を選ばないように).既製のトタン製円錐形入り口は,最下部近くに記した業者から購入が可能です.
(2)箱に開ける
ポリプロピレン製の箱(市販の収納箱等)に直径約3mm以上の穴があると,捕獲された野鼠等が囓って大きくします.穴の周縁も囓れる突起物です.
(3)飼育容器内の容器
マウス繁殖用の容器内に入れる水と餌の容器が,ポリプロピレン製なら金網で覆います.
(4)金属網
網戸用の網程度の番線でできたアルミ網は,野鼠などが穴を開けます.ステンレス製の網戸用網も,万全ではありません.亜鉛メッキかステンレスの網で,より番線が太いもの(1分目以上)を用います.
ホームページへ
5.工作過程の工夫
(マウス繁殖用容器等の製作にも共通)

(1)を準備
以下の形状の作成には,厚紙の型を準備し,材料にあててマジックインキでなぞります.型をポリプロピレンやアクリルの板で作ると,丈夫です.
   既製の箱の穴開け部分の形状
   入り口のトタンや金網
   その他の金属網 (マウス飼育室の底,マウスの餌入れ,罠内の仕切・安全用網)
(2)切断
網(やトタン板)の切断には,金切りハサミを用いますが,金属板用押し切りがあれば,便利です.
(3)接合・固定
金属網などをポリプロピレン製箱に固定する作業が多いはずですが,以下の方法があります.上からがお勧めの順です.なお,網は箱の内側に固定します(ポリプロピレンの端を囓られないために).
1)短いステンレスビス(木ねじ)とワッシャーで固定する.
  電動ドライバーなどで,ワッシャー(例:外径13mm)に通した尖ったビスを直接ねじ込み ます.ドリルでの穴開けが不要で,いたって短時間での作業です.充電式の電動ドライバーが最適で,締まれば空回りするようにセットします.ビスの先が出ま すが,問題はありません.ステンレス製のビスとワッシャーは,箱買いすると単価が安いです.
2)箱に穴を開け,短いステンレス針金で結わえる.
  4.に示したように,穴は小さめです.
3)その他 リベット ボルトとナット などを用いる.
(4)餌入れの網
罠内のマウス餌入れの網の上端は,箱容器よりも5~10mm上に固定します(下図参照).そうしないと,マウスがふたとの隙間から餌入れ内に入ります.
 
6.小分け材料の購入先(2011年10月現在)

(1)入り口 (トタン製円錐形ひだ状,成型済み) 
  初期にはひだにアールが付いている(外に膨らむ)ため,外側に開きにくく,動物が入りにくいです.すべてのひだを,一度外に曲げてから,もとに戻します.
(2)ステンレス溶接網(網目は約10mm): マウス飼育室の底に必需.幅1mで,例えば1mの長さを入手.沖縄県内の一般店で在庫無し.
(3)ステンレスの短いビスとワッシャー: 5.(3)を参照.例えば約100個づつを入手.

 以上を小分けで購入するには,以下がありますが,必ず電話で在庫の問い合わせを.
    豊平ステンレス工業(有): TEL  098-833-4572 FAX  098-853-1849 (那覇市仲井真290,国場十字路南)
       なお,別の入手先として,以下があります.
           入り口セット: 沖縄県公衆衛生協会 (連絡先は,ホームページ末尾参照)      
           ステンレスの短いビスとワッシャー: ボルト店

ホームページへ

7.ヘビ用罠の製作例

 マウスを箱内で飼育するタイプを,市販のポリプロピレン(プラスチック)箱を元に作製するときの案です.
 金網は,マウス飼育室底(と仕切下部)の1枚はマウスの糞が落ちるくらいの粗いステンレス溶接網を用い,それ以外は亜鉛メッキ網(2分か3分目)を用います.
 上記のステンレス網を長くして,折り曲げた上を餌入れ用網とすることもできます.
 入り口の円錐形部は,既製のようなトタン板(ひだ状)のものは実績がありますが,金網製は試案です.
 ヘビは,網中央に開けた横長の長方形の穴を通り,円錐の先に進み,先の穴から入ります.周囲に網があるため,出口(入り口の穴)が分かりにくいはずです.
 切り取る部分は,厚紙で型を作っておきます.また,網を箱に固定する際には,ワッシャーを通したビスを直接(電動)ドライバーで締め込みます.

トラップ ネジ  トラップ入り口穴
ビスを締め込み網を固定(事前の穴開け不要)    入口部を開けた網を箱に取り付け 

ホームページへ


inserted by FC2 system