ハブ予 防対策と生態など「ハブ」はハブの仲間を含む場合あり. 表示の価格や資材の提供状況 等は変動.

外来のヘビ

(沖縄島で有 害な種

 <中央の表は,文章による説明をまとめたものです>

下記のヘビについて,順に説明します.応急処置や予防対策の 方法はハブと共通ですので,前のページの該当箇所をご覧下さい.

 クサリヘビ科 サキシマハブ

        タイワンハブ

 ナミヘビ科    タイワンスジオ(無毒)

 コブラ科     タイコブラ

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サキシマハ ブ(学名:Protobothrops elegans

 

  

 

原産地と生態

  サキシマハブは,石垣島・西表島などの八重山諸島内のおもな島を原産地とし,台湾と中国南部に分布するタイワンハブに近縁なクサリヘビ科の毒ヘビである. ハブとタイワンハブよりも顎が張った3角形の頭を持ち,体色は多くは褐色地だが,オレンジ色に近いものもいる.森林から畑や集落内まで幅広い環境に生息し, 人の受傷率(人口あたり)は沖縄県内のハブの約8倍と高い.最大の頭胴長(尾を除いた長さ)は雌雄とも約100 cm(全長125 cm) である.カエル類・トカゲ類・哺乳類など餌の種類の幅は広い.他のハブ類同様夜行性である.ハブとは異なり咬症数は冬期も減少しないが,沖縄島における飼育下で の観察では,冬期の低温の夜には活動率が低下し,春と秋には高温・高湿の夜に活動率が高く,夏にもっとも活動的となる.

 

  

サキシマハブ(オレンジ色型)                  1雌が産んだ卵                   脱皮中のサキシマハブ

 

移入過程と沖縄島での生態

 外国産ヘビと同様に,観光用のショーやハブ酒の原料などに用いるた め,少なくとも本土復帰(1972年)以降,八重山諸島で 捕獲されたものが年に数千匹の単位で沖縄島に持ち込まれた(一部施設では継続).1976年 に糸満市米須にあるレストランのヘビ飼育場から,マングースとの決闘ショー用に保管されていた約100個 体のサキシマハブが,盗難後におそらく放逐された.事件の直後やその4年後に行われた捕獲作業では,捕獲されなかったが,事件後現場周辺で発見されるよう になる.1982年にキビ刈り中に捕獲したサキシマハブを 取り扱い中に,初めての咬傷が発生した.2000年までの10年間に,沖縄県衛生環境研究所に持ち込まれた数のみで500匹を越え,同研究所によるその後の捕獲調査でも数百匹が捕獲されてい る.ハブ採集人やハブトラップによる捕獲結果によると,2009年 において逃亡現場周辺の4つの字(伊原,米須,南波平,真壁)では,捕獲数でハブを上まわるまでに増加している.沖縄諸島において,人を咬んだヘビの種類 が不明の場合はハブとして集計されるため,糸満市においてサキシマハブ咬症として記録される数は過小評価となる.この点を補正したサキシマハブの受傷率 (人口あたり)は,糸満市の高密度地域(5字:米須,大度,伊原,真壁,南波平)に限定すると,八重山諸島以上となりハブの平均値の17倍 に達する.八重山諸島も含めサキシマハブの受傷率は,農村地域が多い市町村に限定したハブの率よりも高い.これは,サキシマハブの生息密度がハブよりも高 いためと推測される.糸満市で捕獲後に,飼育下で産卵した雌も確認された.また,ハブとの交雑個体と推定されるものが,4個体確認されている.糸満市に隣 接した東風平町で1個体の捕獲があるが,2001年現在で 上記4字以外では高密度には生息していないらしく,その範囲は直径約6kmと 大きくない.まれに,那覇市などの遠隔地で捕獲されるのは,偶発的に持ち込まれたものであろう.しかし沖縄島北部の名護市許田では,過去に本種を搬入した 施設の近くにおいて捕獲と目撃があり,定着した可能性がある.

 以下に,糸満市で捕獲された個体,ならびに捕獲後に飼育下で 得られた繁殖等についての情報を記す.飼育下では,年2回から4回脱皮し,最長寿命は17歳 であった.採集後に産卵した最小の雌の全長は約65 cmで, 雌は6月中旬から7月中旬にかけて長さ約3.4 cm,重 さ約7.6 gの楕円形の卵を,3から10個産む.他のヘビの卵と同じく,サキシマハブの卵も乾燥に弱く,産卵場 所は湿気が多い場所である.産卵から約44日後に,全長約25 cmの子ヘビが孵化する.1歳で約2倍の長さに成長する.飼育下でハ ブより繁殖しやすく,5年連続して産卵した雌もいるが,野外では成熟サイズに達した雌でも,毎年は産卵しないらしい.

  
枯葉の中では見つけにくい                  名護市で捕獲された個体

対策

 サキシマハブの毒はハブの毒に近く,マウスに対する効果では 同じ量のハブ毒の約0.7倍 の強さを持つ.サキシマハブ咬傷の治療には,ハブよりも頻度が低いが,八重山諸島でもハブの抗毒素が用いられており,ハブとの雑種個体も含め,沖縄島で事故が発生 しても治療面では問題はない.ハブの抗毒素はハブ類全般に効果があるため,咬んだハブ類の種が不明な場合でも,用いることができる.糸満市のサキシマハブ は,高い受傷率とハブとの雑種誕生がもたらす遺伝情報の攪乱の可能性から,除去することが望ましい.ただし,その分布範囲は逃亡後30年 以上を経過しても上記のように小さい可能性があるが,この程度の広さの地域においてもトラップなどを用いて除去できる可能性は低い.対策としては,ヘビ類 を見分ける能力を身につける教育や広報を行うと共に,危険性を減らすために,発見したサキシマハブを駆除する以外に,発見例が多い地域では,役場が保有するマウス を入れたトラップの利用がある.ただし,対策は半永久的に続ける必要があり,安価な刺し網を用いた捕獲の有効性はサキシマハブでは確認されていないことから,林 と屋敷・施設との間にフェンスを設ける,餌無しの誘導トラップを壁沿いに設置するなどが,経費は要するが持続的な予防法として考えられる.

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沖縄島の有害な外来ヘビの説明. 2010年時点での情報をもとに概略を記しました.「飼育下」は沖縄島における資料.

 

サ キシマハブ タ イワンハブ タ イワンスジオ タ イコブラ
学名 Protobothrops elegans Protobothrops mucrosquamatus Elaphe taeniura friesi Naja kaouthia
ク サリヘビ科 ク サリヘビ科 ナミヘビ科 コ ブラ科
原 産地 地 域 八重山諸島 中国南部と台湾 スジオ類は中国,東南アジア,インド 東南アジア
被 害 受傷率はハブの約8倍 台 湾では1,2位の受傷数 (無 毒ヘビ) 多 いが調査資料無し
毒 の強さ ハ ブの 0.7倍 ハ ブの 1.2倍 (無 毒ヘビ) ハ ブのおよそ10倍
抗 毒素 ハ ブ用で効果あり ハ ブ用で効果あり (無 毒ヘビ) ハ ブ用で効果無し
体 色 褐色地だが,オレンジ色に近いものも 褐色地でサキシマハブに酷似 尾の側面に黒色の太いすじが目立つ 背は黒色が多い,首を広げると白い輪
頭 の形 ハブより顎が張った3角形 ハブに近い 三角形でない 三角形でない
生 息環境 森林から畑や集落内 原産地では低地から標高1500 mの間の森林から集落内,沖縄島でも森林から 畑や集落内 原産地では森林から集落 原産地ではおもに低地の水田など
活 動 日 周 夜行性で,出現時刻は日没時刻に対応して季節 変化 夜行性で,出現時刻は日没時刻に対応して季節 変化 日中も活動 夜行性だが,飼育下では昼の活動例も
季 節 飼育下での活動率は,冬期には低,春と秋には高温・高湿の夜に高く,夏に最高 飼育下での活動率は,夏が最高,冬が最低で,春も低 い (冬 眠しない) (冬 眠しない)
カエル類・トカゲ類・哺乳類 鳥類・哺乳類・カエル類・爬虫類 哺乳類・鳥類 ネズミなどの小哺乳類,カエルや魚類
行 動など ハ ブより攻撃性が低い 動 きが素早く,沖縄諸島のハブ類の中ではもっとも攻撃的 よ く木に登り,動きが速く,敵に対し威嚇音を出す 興 奮すると,上体をもたげ首を広げ,フーという音を繰り返し出す
移 入 開 始 遅くとも1970年代 遅くとも1970年代 遅くとも1975年 1980年頃(南城市)
用 途 ハブ酒などの製品とマングースとの決闘ショー ハブ酒などの製品とマングースとの決闘ショー ハブ酒などの製品 ハブ酒などの製品とマングースとの決闘ショー
最 大数 年に数千匹 施設あたりで年に数千匹 年に約千匹の施設あり 年に数千匹
逃 亡時期 1976年 (糸満市)約100匹を盗難後におそらく放逐 1990年以前(名護市),不明(恩納村) 1970年代末以前 1993年,1994年に7匹発見,名護市中 山,為又,屋部と今帰仁村湧川
2010 年頃の分布 糸満市の直径約6kmうち5字で高密度,名護市許田にも定着か 本 部半島東部(名護市,今帰仁村,本部町)と沖縄島中部(恩納村,読谷村) 沖 縄島中部の南北約15 kmの地域 (そ の後発見なし)
ハ ブとの雑種 約5匹確認 (可能性あり) (可 能性無し) (可 能性無し)
野 外の咬症など被害 最 初 1982年 に咬症 2005年咬症 (無 毒ヘビ) 無 し
2010 年頃 糸満市の高密度地域でハブの17倍の咬症率 年 に0件から2件の咬症 北 部まで分布拡大なら,稀少動物等の数の激減が懸念 (定 着せず)
全 長 最 大 125 cm 130 cm 270 cm
標 準 80 cm 90 cm 170 cm 150 cm
雌 の成熟 65 cm 85 cm以下 160 cm以下
雄 の成熟 (不 明) 60 cmあまり 125 cm以下
孵 化時 25 cm 25 cm 50 cm 30 cm
交 尾期
産 卵 飼育下で6月中旬から7月中旬 原産地では7,8月という記載あり,飼育下ででは6月 飼育下で6月 原産地で12−2月
長さ3.4 cm7.6 g 長さ3.5 cm,9 g 長さ5 cm,30 g 長さ 5 cm
 3個から10 7 個から11個の記録あり 5 個から16個 原 産地で20個弱
頻 度 毎年は産卵しないらしい (不 明) 飼育下で年2回産卵の記録あり (不 明)
孵 化 飼育下で産卵から44日後 飼育下で産卵から40日あまり後 8月 原産地で産卵から2カ月後
対 策法 フェンス,環境整備,ハブ捕り器,誘導トラッ プ フェンス,環境整備,ハブ捕り器,誘導トラッ プ 刺し網が利用できる可能性あり (定 着とその後の輸入ともなし)
フェンス最低高 垂直 80 cm 80 cm (不 明)
斜め 50 cm以下 50 cm以下 (不 明)
法 律 動物愛護法で特定動物に指定,飼育などには沖 縄県の許可が必要 特定外来種に指定,飼育・移動には環境省の許 可が必要 特定外来種に指定,飼育・移動には環境省の許 可が必要 (特 定動物)

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名護市で捕獲されたハブ属の雑種

タイワンハブ(学 名:Protobothrops mucrosquamatus

原産地と生態

 中国南部と台湾が原産のタイワンハブは,八重山諸島に分布す るサキシマハブと外部形態・遺伝情報とも似通ったクサリヘビ科の毒ヘビである.原産地では,低地から標高およそ1500 m以上の間の森林から集落内までの幅広い地域に生息し,人への咬 症被害も多数生じている.鳥類・哺乳類・カエル類・爬虫類などの多種類の動物を餌とする.

 

移入過程と勢力の拡大

 タイワンハブは,遅くとも1970年 代から,ハブ酒などの製品とマングースとの決闘ショーに用いるため,中国と台湾から沖縄に輸入され,複数の施設に搬入された.年間搬入数は,施設あたりで 数百から数千に上った.タイワンハブが定着した沖縄島北部の本部半島の東部においても,少なくとも2施設に搬入された.この地域では1993年と1994年 に,タイコブラが連続して発見され新聞などを賑わしたため,地域内の全ての施設が,外国産ヘビの搬入を取りやめた.このタイコブラの生息状況把握のため, ヘビの捕獲ならびに目撃情報の聞き取り調査が行なわれたところ,タイワンハブが相次いで捕獲され,住民による目撃も確認された.ただし,タイコブラ同様, タイワンハブが野外に逃げ出した経緯は特定できない.搬入停止から5年以上経過後に1,2歳と推定される小型個体が捕獲され,また,捕獲個体が飼育中に交 尾・産卵したことから,当でへの定着は確実である.分布域(1999年 時点で直径約4 km)でのトラップによる捕獲率は,沖縄 島におけるハブの平均値と変わらない程度であった.その後の目撃例や捕獲調査によると,2009年 時点では本種の分布範囲は,本部半島の東部の名護市・今帰仁村・本部町を含む直径約7 km以上に達し,中心地域での捕獲率は沖縄島のハブの平均の5倍となり,咬症事例も最初の2005年以降,年に0から2件発生している.なお,沖縄島の中央部に位置する恩納村の南部においても,別の集団の定着が確認され,2008年には隣接する読谷村でも捕獲されている.

  

タイワンハブ                            雌と卵                        孵化

 沖縄島での生態   

 沖縄島で捕獲された個体から明らかになったタイワンハブの生 態を記す.捕獲されるのは雄が多く,成熟に達する頭胴長は,雌で全長85 cm以 下,雄で全長60 cmあまりで,飼育下で容易に交尾・産 卵する.産卵期は,原産地では7,8月という記載があるが,沖縄島では6月で,およそ長さ3.5 cm9 gの卵を7個から11個産んだ記録がある.産卵から40日あまり後に,全長約25 cmの子ヘビが孵化する.サキシマハブより動きが素早く,沖縄諸島のハブ類の中ではもっとも攻撃的である.夜行性で,出現時刻 は日没時刻に対応して季節変化する.活動率は夏が最高,冬が最低で,春も低い.

 

対策

  タイワンハブの定着は,日本国内に外国産の毒ヘビが定着した最初の例である.分布域内とその周辺の住民には,新たな毒ヘビに注意するよう,ちらしが配られ た.住民による目撃地点は,庭,ミカン園,道路などの生活域であり,咬傷も生じている.タイワンハブの毒はハブの毒に近く,マウスに対する効果では,同じ量 のハブ毒の約1.2倍の強さを持つ.受傷後の治療にはハブ 抗毒素が有効である.山林地域まで分布していることから,除去できる可能性は低い.1999年 時点の分布域は,国道58号 線名護バイパスの北にほぼ限定されていた.この国道は4車線で交通量も多いことから,さらに道沿いに簡易フェンスをめぐらし,本部半島から沖縄島全域への タイワンハブの拡散防止の策がとられた.ただし,国道の下を屋部川が2箇所で横断し,国道の南側でも数匹が捕獲された.さらに,後には恩納村南部において も別の定着群が確認されたことから,本種は沖縄島内の広い地域に拡散する可能性がある.予防対策としては,他のページで説明したハブ対策の手法と同様の, フェンスの構築や役場のマウス入りのトラップの利用等があるが,ハブには有効な刺し網による捕獲実績は無い.持続的に捕獲するには,壁沿いに誘導トラップ を設置する方法もある.今後とも分布域の拡大が続くため,危険性が新たに生じた地域においては,ヘビの見分け方を含めた広報活動による注意喚起が必要であ る.なお,特定外来生物に指定されたため,移動や飼育を行うには,環境省の許可が必要である.

 

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タイワンスジオ(学名:Elaphe taeniura friesi

原産地と生態

  スジオ類は,尾の側面に黒色の太いすじが目立つナミヘビ科の無毒のヘビで,中国から東南アジア,インドまで分布する.宮古・八重山諸島には,亜種のサキシ マスジオが生息する.沖縄島に持ち込まれ定着した亜種は,斑文などから台湾に分布するタイワンスジオと推定される.原産地では,人里から森林まで幅広い場所に生息 し,よく木に登り,哺乳類・鳥類を食べる.その体は,食用・薬用・加工用(靴・バッグなど)となる.全長は標準で220 cm,最大270 cmに達する.動きが速く,敵に対し威嚇音を出すが,人に慣れやすく,ペットとしての飼育に適するとされる.ただし,沖縄島で 捕獲される個体は,人に対して攻撃的である.

 

   

 

 移入過程と拡散

 沖縄県では,観光用のショーとヘビ酒などの製品の材料とし て,地元産のヘビにとどまらず,国内の他の島や外国で捕獲されたヘビが多数用いられてきた.本亜種が定着した時期や経緯は特定できないが,沖縄島中部の恩 納村において1970年代末には逃げ出していたらしい.こ の地域には,少なくとも沖縄海洋博覧会当時から1980年 代の始めの間に,台湾経由で本亜種を含む数種類のヘビを,年間およそ1000個 体搬入していた施設がある.2001年時点での本亜種の分 布範囲は,少なくとも北は恩納村・金武町から,南は北谷町・北中城村に至る南北におよそ15 kmの 範囲で,この地域から離れた偶発的な発見が沖縄島南部などにある.ヘビ類は一般的に夜行性でかつ活動性が低いため,人に発見されにくい.さらに,ヘビの種類を識別できない 人が多数を占めるため,逃亡した外来ヘビを発見することは通常困難である.しかし,体が大きく目立つ模様を持つタイワンスジオは,日中も活動することか ら,発見した住民が警察などに捕獲を要請する場合も多い.

 

飼育下での生態

 沖縄島にて飼育下で確認された生態は,成熟時の全長は,雌で 約160 cm,雄で約125 cmで,6月におよそ長さ5 cm30 gの卵を5個から16個産む. 8月に孵化する個体の全長は約50 cm,1歳で約2倍の 長さになる.生後9ヶ月で全長が約160 cmに達し,肥 大した卵胞(卵の元)を保有したことから,繁殖する可能性を持つ雌もあった.この早熟の可能性と,飼育下で交尾産卵しやすく,1年間に2回産卵した例もあったことか ら,タイワンスジオの増殖率は高いと推定される

 

沖縄島中部で発見されたミナミオオガシラ(定着せず,下記参照)

被害予想など

  沖縄島で散発的に発見された大型のヘビの中には,別亜種のサキシマスジオや,グアム島に侵入し鳥類と爬虫類を中心とした多くの在来種を絶滅させたミナミオ オガシラも含まれる.幸いこれらの大型のヘビの定着は,確認されていない.ただし,タイワンスジオは,国内では最大のヘビであり,分布域を沖縄島内の北部 地域まで拡大した場合,ミナミオオガシラの例のように,そこに生息する在来種の個体数を激減させる可能性がある.トラップなどによる取りつくしはほぼ不可 能であり,また,分布の拡大を防ぐ方法もない.捕獲には刺し網が利用できる可能性がある.特定外来生物に指定されたため,移動や飼育を行うには,環境省の許 可が必要である.

 

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タイコブラ(学名:Naja kaouthia

発見例

 沖縄島の北西部に位置する本部半島の東部では,逃げ出したと思われるコブラが1993年と1994年 (平成5年,6年)に7匹も出没した(発見地点は名護市の中山,為又,屋部と今帰仁村の湧川).コブラは人を死亡させる危険性が高い神経毒を持っているた め,住民にとって大きな脅威となった.逃げ出したコブラの数は不明だが,発見数から考えて,子孫を残し定着してしまう可能性もあったが,その後の発見例は 無く,定着しなかったと推測される.

 

   

               攻撃姿勢                                  日光浴中?(沖縄島)

 見分け方

 発見されたコブラはベトナムからインド東北部の間に分布する タイコブラで,沖縄へはマレーシアから輸入されていた.輸入されたコブラの全長は約150 cm.沖縄島に原産するヘビで120 cm以 上に成長するヘビは,ハブとアカマタだけだが,沖縄島中部に定着したタイワンスジオも2m以上まで成長する.なおコブラの卵は長さ5cmの楕円形で,孵化した赤ん坊の全長は約30 cmである.背中は黒色のものが多いが,褐色のもいる.首を広げると 目立つ白い輪以外,模様は無い.腹側は背より白っぽく,とくにのどは白色に近い.

 体はハブやアカマタよりやや太め.頭はハブのように三角形で ないため,無毒のヘビに見える.興奮すると,上体をもたげ,首を広げて,フーという音を繰り返し出すが,こんなヘビはコブラ以外にいない.攻撃範囲はせい ぜい50 cm

 沖縄島産のヘビで間違えやすそうなのは,ガラスヒバァとリュ ウキュウアオヘビである.ガラスヒバァは,コブラに似て背中が黒っぽいが,白い模様が入り体が細長い.リュウキュウアオヘビの背は目立つ模様は無いが,緑 色である.

 

原産地における生態

 タイコブラは,おもに低地の水田などにいる.12−2月に雌は20個 弱の卵を産み,約2カ月後に子ヘビが孵化する.ネズミなどの小さい哺乳類以外に,カエルや魚も食べる.夜行性で,昼の隠れ家として多く用いるのは,水田の 畦にネズミなどが掘った穴である.ただし,東南アジアより寒い沖縄島では,飼育下で昼も活動した.ハブのようには木によく登らない.

 

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